そのまんま、このまんま
絵・文 いぬまかおり
素敵なものや好きなことなら
なんでも知ってるつもりでも
苦手なものまでわからなければ
いつかピタリと止まってしまう
好きを伝えることよりも
嫌いを伝える言葉のほうが
きっと静かで繊細で
ふんわり舞うほどやわらかい
なんとか受け入れるんじゃなく
どうにか乗りこえるでもなく
できないことはできないままに
見えなくなるまで逃げてみる
遠くにいけばいけるだけ
それは欲しい人の手に届き
いつかはっとするような
虹色の弧を描くから
苦手なものはなんだろう
苦手な者は誰だろう
良いものを嫌う幼さを
そのまんま
このまんま
いぬま かおり/Inuma Kaori
1989年、神奈川県川崎市生まれ。フェアリー(妖精)研究者。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。フェアリーが「存在するor存在しない」という二元論でしか語られないことに違和感を持ち、修士論文では、科学人類学のアクター・ネットワーク論を用いてフェアリーを存在論的に考察した。現在は派遣の事務職で生計を立てながら、個人的に同研究を続行&博士課程進学に向けて準備中。ヴァイタリティ溢れる虚弱体質。