白い山梔子

青柳和枝

 

  

 

あるべき姿は 

誰に強要されたわけでもなく

人としての生き様の

高みを目指しているわけでもなく

なのに

見えないものに押し潰されそうになる

毒された心と体との葛藤

声にならない悲鳴をあげる

「そんなふうには生きられません」

そう叫んでしまえばいいのか

そうでもない

そんなふうに生きたくないわけじゃなく

そんなふうに生きたいわけじゃなく

 

「囚われることから

 解放してやれば

 自由に生きられるさ」

 優しい言葉に

少し溶けて 

  融けて 

  解けて 

  梳けて

 

目を閉じて

白い自分を思う

白かった自分を思い出す

白い自分を探す

白い山梔子が香っている

十月だというのに

 

連作「会いたい」より



 

青柳 和枝/あおやぎ かずえ

詩人。山梨県在住、1957年生。詩集「青が弾けた」「ウ キ セラ ~何が起こるの?~」。夫とともに<カフェ甲斐茶寮>経営。