―朝待ち草―

あさまちそう

桑原 眞知子

 

 

          蒼弓の空の底には 真理が眠っている

          久高の宙に届きそうな雲の高さ

          空の肉体から絞りだされたような 色合いの鮮やかさ

          祈りの場の清潔さ

 

          雲が流れ風が吹き

          一滴の水が仲間を集めて流れを作り

          知らなかった場所へと流れ込んで行く

          その流れ込んだ先に魂の故郷があった

 

広島で『久高オデッセイ』の上映会を開催。52人の方に見て頂き、静かな熱気がありました。

 

この上映会は、緩和病棟で最期の闘いを続けるいさじ章子さんに、高橋あいさんから「『久高オデッセイ』を見て欲しい」とDVDを送る手配をして頂いたことから始まりました。そしていさじさんの「石河屋での最後の個展をしたかった」という希望を叶えて、上映会当日はいさじさんの油絵や詩や俳句と空間を共有しました。

 

 

あいさんが飛騨高山から駆けつけて、短い時間でしたが大重監督のこと撮影秘話など貴重なお話をお聞きすることが出来ました。大重監督が「自分は久高を撮ることで癒されて来たから、3.11で傷ついた人や病を抱えている人に見てもらいたい」と仰ってたこともお聞きしました。沖縄映像文化研究所の比嘉真人さんには、DVDを長期間お借りしてお世話になりました。菊間さんにも大勢の方を動員して頂きました。上映会の様子は石河屋オーナーの石河まりさんがfacebookにアップして下さいました。

 

緩和病棟に入院して以来、bedに植えられた草のように身体を動かせなくなったいさじさんは『朝待ち草』(あさまちそう)のようです。夜明けの来るのを待つ、人が来るのを待つ、自分の明日を待つ。

最悪の体調の中で始まった個展の準備で、いさじさんは『パンドラの箱』の隅に隠れていた<希望>を見つけました。

 

          苦しさを うちわあおぎて 気をまぎらわす

 

          あといくにち(幾日)の わたしのいのち 宇宙にむかって欠伸ひとつ 

 

いさじさんの思いを聞き取り、息子の大井赤亥さんが全体のコンセプトをまとめ、私は展示の仕掛け設置と役割分担して準備を進めました。

多くの方の手助けがありました。石丸さん、木村(牧)さん、松波さん、高雄さん、藤岡さん、まるみさん、馬庭さん、浦島さん、おがさん、彰さん、burg。皆が心寄せ合って作った本人不在の個展会場は、いさじさんから皆へと受け継がれる魂の遺産でした。

 

上映会、個展の準備と体はボロボロでしたが、精神的には晴々としてました。

 

そして気づきました。子どもの頃から作り続けて来たのは、作る度に再生し新しい朝を迎える為だったのだと。

 

  

桑原 真知子/くわはら まちこ

広島県生、空見人。多摩美術大学絵画科油画課卒業。広島大学文学部考古学科研究生修了。草戸千軒町遺跡にて、遺物の漆椀の図柄の模写や土器の復元を行う。シナジェティクス研究所にてCG担当とモジュール作成などを経て、現在は魂を宙に通わせながら作家活動を行っている。