「永遠のイコロ(宝)」

郷右近富貴子




約32年の歳月をかけて撮り続けてきた道東のアイヌ民族写真集

前沢 卓 写真集「アイヌ民族 命と誇り」


まりも祭りの前に、ウタリの皆さんに渡せたらいいんだけど…


そう言っていた卓さんの願いも叶い、2014年10月上旬、

真っ先にコタンの皆さんに手渡された。


「命」

一つ一つの命が民族の命となり 民族が生きた証となる。


という言葉から始まる、在りし日のエカシやフチの姿。そして今を生きる人の顔々。


1ページ、1ページ、めくるたびに、そこに映る人の温かさや強さ、そして優しさに溢れ、胸がいっぱいになる。


前沢卓さんとの出会いは、

約31年前に、屈斜路コタンで行われた、幻の「コタンコロイオマンテ」の時で、祖母と母と兄弟とアイヌ衣装を着て、並んでいる写真を写してくれたのがきっかけだった。

お婆ちゃんが大好きだった私にとって、この写真は、本当に大切な宝物であり、原点でもある。



その時々を切り取り、そして永遠に残るもの…


その時、その時代に生きた大切な人達、その時の思いが、この写真集には溢れている。


いつまでも変わらない事などないはずなのに、なんとなく日々を過ごしながら、気がつくと、沢山のことが移り変わっていく。

写真集をめくると、近年、天へと旅立って行ったエカシやフチの生き生きとした在りし日の姿が収められていた。

「命」と題された最初のページには、叔父のポートレートが収められていて、叔父は、この写真集を受け取った翌日に、天へと旅立って行った。


時はどんどん過ぎて行く。

写真集の中には、7才の私から時を経て、祖母と母と私と娘 の4世代の写真も。


命を一つ一つ重ねて、かけがえのない人達との今を大切に過ごす事。


日々の暮らしの中で、ついつい忘れてしまいそうになるけれど、

前沢卓さんから頂いたイコロ(宝)を見ては、胸に刻んでいこう…

と、心から思っています。


無断転写禁止
無断転写禁止

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郷右近 富貴子/ごううこん ふきこ

幼少よりアイヌ舞踊などを習いつつ阿寒湖アイヌコタンで育つ。3児の母。アイヌ料理屋ポロンノを家族で経営しつつ、阿寒観光汽船「アイヌ文化ギャラリー船」にて、アイヌ語り部として、ムックリやトンコリなどを演奏し、アイヌ文化を紹介している。姉・床絵美と’Kapiw&Apappo’というユニットで音楽活動を行っている。民芸喫茶ポロンノホームページ