仏の中で暮らす
高橋あい
8月は広島県にて大きな土砂災害が起こりました。一ヶ月が経った現在でも、行方不明者があり、家屋の崩壊によって行き場をなくしている方も多くいます。心よりお見舞い申し上げます。
2011年十津川ダム周辺、2012年熊本県北部、去年の伊豆大島に引き続き、毎年のように起きる土石流災害や洪水。ニュースに取り上げられなくても小さな災害は日本の至るところで起きています。
飛騨でも八月は大雨が降り続きました。多くの地区では祭りや花火の中止を決めていましたが、郡上八幡で行われている「徹夜踊り」は、そんな連日の大雨の中でも浴衣を着た大勢の人で踊り明かしました。
私が取材に出掛けたその日も、途中から雨が降り始めました。カメラを抱えた私は、日にちが変わる前に帰ることに。道中の大雨と雷のなか、「このまま流さて帰らぬ人になるのかも」と本気で思ったものでした。それでも、何かを信じて車のアクセルを踏みつづけ、いつもの二倍の時間をかけて自宅へ帰りました。知っている曲をひとり車の中で歌いつづけ、自分の中の恐怖をなんとか消そうとしていました。
大雨に怯え、気象庁の警報を見続ける自分を他所に、自然の植物や人間以外の動物たちはその天気と呼応している姿があるように感じました。植物は風に身をまかせて揺らぎ、川は流れやすい姿で流れつづけ、動物は雨風の当たらないところに身を隠していました。人間は、いつのころからか、自らがつくった情報社会と環境に支配され、怯えているのかもしれません。
良寛さんの師匠の一人、宗龍禅師の「豊穣祭」にこんな言葉があります。
人も鳥も獣も皆、仏様のからだの内にあります。
仏様のお陰によって極楽界に導かれ、五穀が生え実り、人も鳥も獣も生きているのです。
人は智恵というものがあり、田畑で自分の食べ物を得ることができますが、鳥や獣は大地を探し回って自らの食べ物を得なければなりません。
人は正直な政によって命はつながりますが、鳥や獣は五穀を盗み食べても、人と違って食を満たせば、それ以上のものを欲しがりません。
このため、人は慈悲の心をもって鳥や獣と共生することで、五穀は豊穣となるとしています。
ここは、人間だけの世界ではないことを知り、ここに自然と共に生きていることの豊かさを感じる。ともに分かち合う時間が、今の社会には必要なのだと思います。
東京自由大学では、これからの生き方のヒントになることを願いながら講座を繋げていきます。9月10月の主な講座をここでご紹介しますが、いずれも詳細は、東京自由大学ホームページか、FACEBOOK「東京自由大学」ページをご覧くださいませ。
1、世直し講座第二弾「蟻の目コース」
蟻のように地域に根ざし実践的な視点から世直しを考えるコースです。
9月21日は発明家の藤村靖之氏を講師に「非電化の暮らしとエネルギーの未来」、10月25日は半農半X研究所の塩見直紀氏と各地で土壌再生講座を行っている矢野智徳氏を講師に「土を耕し、心を耕す」講座をお届けします。
2、震災解読事典Ⅱー最終章 シンポジウム
昨年度から一年半かけて開催してきました「震災解読事典」の最終章として、10月4日にシンポジウムを行います。池内了氏(宇宙物理学者)×高橋源一郎氏(小説家)と、東京自由大学理事長・鎌田東二氏による「3.11から未来に届ける言葉の想像」、是非お誘い合わせの上お越し下さい。
3、特別企画 現代霊性学講座 第4弾 戦争と霊性
2011年度から毎年行っている現代霊性学講座。今年度は「戦争と霊性」をテーマに、後期に全五回を予定しております。