第二のはじまり

髙橋あい

 

 

 

約18年かけて築きあげてきた自由大学ファーストステージが今年3月に幕を閉じ、新たにセカンドステージが始りました。学長は鎌田東二先生から島薗進先生にバトンが渡され、新しい理事長に宮山多可志さん、運営委員長に辻信行さん、事務局長に津田智子さんというファーストステージから多くの講座を支えてきたメンバーによって運営が引き継がれました。講座数は以前の半分以下となりましたが、充実した内容でスタートを切ることができました。これも単衣にファーストステージの守護霊のみなさんと、忙しい中講師を引き受けて下さった先生方、そして講座を楽しみに足を運んで下さるお客様のおかげと思っております。この場を借りて御礼申し上げます。

EFGのエッセイも、今までの執筆者に加え、新学長・島薗進先生による連続寄稿と、セカンドステージの第1回目の講座の講師を勤めて下さった妖精研究科の井沼香保里(いぬまかおり)先生、新運営メンバーの1人である伊藤啓太さんが加わりました。今後も表現豊かなメンバーでお届けしていきますので、新しい自由大学とこのウェブマガジンをどうぞ宜しくお願い致します。

 

 

北山耕平さんが翻訳をした「ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ」という本の中に、こんな一説があります。

 

「今日よりも明日がよくなりますように」と祈るのは非部族民の人たちで、現代人の祈りはこれである。「明日はもっと素晴らしい」というわけ。ところが部族的な暮らしの中にいる人たちは原則的には「今日と同じ日が明日も続きますように」と。(中略)ネイティブの人たちの部族的な生活においては、「毎日がビューティフル」なんだな。「今生きてここに存在している」ことは、そのまま「宇宙にある万物を作られた存在からの贈り物」と認識されているわけ。生まれてからずっと周囲の自然環境と密接な環境を持ちつつ育ってくる彼ら(彼女ら)は、はじめから季節の移ろいやありとあらゆる天気の変化が、わたしたちのみならずこの惑星そのものの存在にとって絶対に欠かせないものだと言うことを知り抜いている。(「良い朝!」より)

 

私は、4月に3週間ほど西アフリカに位置するセネガル共和国に行ってきました。詳しくは、エッセイのほうで記していきますが、大地も動物も植物も動物も、もちろん人間もとても豊かな土地でした。馬、牛、ロバ、羊、鳥、犬、猫、、、そして人間。人間が主張していない世界があり、決して金銭的に豊かではないはずだけれど、日本が失ってしまったものことの多くがあるような気がしました。

私たち先進国は、「自然をコントロール出来るもの」だと過信をし、前へ前へと進んできました。けれど、本当の豊かさは私たち人間も自然の一部であり、「今生きてここに存在している」ことなのだとセネガルの自然に寄り添う人や動物から教えてもらった時間であり、帰ってからネイティブ・アメリカンの言葉に共鳴をしました。

 

今年度の東京自由大学では、「書物と知」「宗教ってなに?」という二本の講座シリーズを企画しました。どちらも先人たちが残した書物や、時代に添って必要としてされてきた宗教を、今の現代に生かしていく術を講師の先生の智慧を借りながら考えていきます。

国会では、「先へ先へ」と次々と法案が決まっていく中で、先ではなく敢えて「今」を見つめる時間を持ちたいと思います。東京自由大学は、「灰色の人」が溢れる都会の真ん中で、「モモ」にとっての「亀」のような存在(場所)であると思っています。是非、いっしょに「モモ」になりましょう。

 

 

 

高橋 あい/たかはし あい

写真家。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。東京芸術大学修士課程修了。ポーラ美術振興財団の助成を受け、2012年9月から1年間、アメリカ合衆国・インディアナ大学にて写真作品制作と研究を行い、2013年10月に帰国。現在は飛騨古川を拠点としている。東京自由大学では、主に 「大重潤一郎監督連続上映会」の企画を行ってきた。また、このウェブマガジンの発案者である。ホームページ